チョン・ウンイン
悲しみが生み出す満面の微笑み
喜びと悲しみではどちらの感情が本人に近いかと聞くと、チョン・ウンインは躊躇なく悲しみと答えた。確かに彼と話をしていると、明るい微笑みより憂いを帯びた表情のほうがよく似合うことに気づく。
5年前、父親がガンに倒れ、直膓からリンパ腺、そして脊椎まで転移したガンのせいで何一つまともにできなくなり、母親は看護に疲れ、顔から微笑が消えた。
「幼い頃から苦労つづきだったんです。父の事業で引っ越しばかりしており、子供の頃から経済的に苦しく、悩み多き少年時代を過ごしました」
そのためだろうか、口をつぐんでいる彼の顔は怖いほど寂しく見える。
目もとにしわが多いため、笑わないと怖いとよく言われた。
しかし、一旦顔の筋肉を解けば、相手を笑わせる不思議な力があるのが彼の顔だ。
「この間、母が書き取った父の詩をもらいました。息子が立派な大人に成長してくれて嬉しいが、息子とその幸せを分かち合うことができなくて心が痛いという内容が書かれていて、すごく悲しかったです」
長男として両親に申し訳ないと思うのは、一度も飛行機に乗ったことがない両親のために飛行機に乗せてあげたが、今の自分にはそれをする時間がないことだ。
「多くのことは望まないが、一度でいいから飛行機に乗せてあげたいんです。クイズ番組の景品で済州島航空券と宿泊券が出てくると胸が痛みます」
演技者である以上、個人的な感情を見せてはならないと自分に戒め、普段は悲しみを心の奥にしまっている。
自然な演技が好きです
ソウル芸術大学演劇科を卒業した彼は、演劇界で地道な活動を続け、実力を磨いた。
「プラナ」というサークルに入って舞踊とジャズダンス、アクロバットなどを身につけ、マルチ・エンターテイナーになる下準備も整えた。
そして、演劇をしばらく休んでいた時、学校の同期である放送作家の紹介でコメディ番組にバイト感覚で出演したのが彼の人生の転換期になった。
現在、SBS『順風産婦人科』を演出しているキム・ビョンウクPDが彼をコメディ番組にキャスティングしたのだ。そして、チェ・ミンシクをキャスティングしようとドラマを観ていた『静かな家族』のキム・ジウン監督が彼に映画出演のオファーを出し、さらに『ウンシリ』を演出したソン・ジュンギ演出家が、適当な俳優が見つからなくて困っていた時、ビデオに発売開始された『静かな家族』を観て彼をキャスティングしてチュンシクという人物が誕生した。
「運が良かったのだと思います。でも、私なりの実力の裏付けがあったから可能だったことだとも思います。作品が一つ終わるとすぐまた次の作品が決まりました。出演を重ねる度に演技力もついていきました。自分では、人気ドラマ『波』よりは『ウンシリ』で演じた疲労した役柄のほうが合っていたと思います。飾らない自然のままの自分を無理なく表現できたので、とても楽でした」
善と悪が交錯する顔
彼の魅力は悪と善を同時に表現できることだ。
表情によって純朴な農民から凄まじい殺人魔まで違和感なく演じ上げる。
「どんな役柄を任されても、視聴者が違和感なく観ることができる演技が何より重要だと思っている」 とチョン・ウンイン。
演劇を経て映画からドラマまで活動範囲を広げて、撮影当日に台本が出るドラマ現場と、充分な準備が必要な映画や演劇は同じ演技は違う部分もかなりあるが、どれも大事にしていきたいとプロ意識をのぞかせる。
今回の『グッキ』はMBCでの初作品であり、期待も大きい。
彼が演じるサンフンは、金にはまったく興味がない純朴な少年が、質屋を営んで莫大な財産を手に入れた父のもと、金の亡者へと変身し、事業を受け継いで財産を増やす一方で、幼い頃からほのかな想いを寄せていたグッキを陰で支える複雑な顔を持った役柄である。
「サンフンは、他の人を愛していることを知りながらも彼女に対する感情を捨てきれないロマンチストです。久し振りに自分とそっくりな役に出会い、とてもいい気持ちです(冗談です…)。MBCに移って初めての作品なので、皆さんの期待を裏切らないよう頑張りたいと思います」
|